思想

死ぬまでに読みたい!哲学の名著100冊-古代から現代・東洋まで厳選ガイド

哲学といえば、最難関の学問としても名高く、「興味はあるけど」手は出しづらい、、、と思ってしまいますよね。

...はい、難しいです。手を出しづらいです。

でも、哲学への蔵書を深めることは、人生に多大な好影響を及ぼします。

批判的思考力や理解力の向上、人に優しくなれる、人生の指針が見つかるなど、そのメリットは計り知れません。

そして、そのメリットは、原著を読むことで最大化されると考えています。

ぴろき

もちろん、まずは入門書から入って徐々に原著に触れていく、というのも立派なアプローチだよ!

そこで今回は、「哲学の名著にチャレンジしてみたい!」という方向けに、おすすめの名著100冊をセレクトしました。

このリストから、特に気になる本にぜひチャレンジしてみてください!

古代西洋哲学

1. プラトン『国家』 (The Republic)

古代ギリシアの哲学者プラトンによる政治哲学の名著。理想国家の構想を通じて正義とは何かを論じた対話篇であり、洞窟の比喩などで有名です。哲学のみならず政治思想の源流として必読です。

2. プラトン『ソクラテスの弁明』 (Apologia)

プラトンが師ソクラテスの裁判での自己弁明を記録した対話篇。ソクラテスの知への姿勢や「無知の知」を示すエピソードが平易に描かれており、哲学の出発点として読みやすい入門的名作です。

3. アリストテレス『ニコマコス倫理学』 (Nicomachean Ethics)

プラトンの弟子であるアリストテレスが、人間の「善い生き方」について論じた倫理学の古典。徳(アレテー)に基づく中庸の徳や幸福論を展開し、西洋倫理思想に多大な影響を与えました。

4. アリストテレス『形而上学』 (Metaphysics)

世界初期の包括的な存在論をまとめた作品で、「存在するものを存在するものとして研究する」学問と定義されます。「知恵(ソフィア)の探究」として、本質や原因を問う哲学的探究の原型を示した難解ながら重要な書物です。

5. ルクレティウス『事物の本性について』 (De Rerum Natura)

ローマの哲学詩人ルクレティウスが著した哲学的長詩。原子論にもとづき自然界の構造を歌い上げ、迷信からの解放と心の平安を説きます。エピクロス派の思想を伝える貴重な古代哲学テキストです。

6. エピクテトス『語録』『要録』 (Discourses / Enchiridion)

奴隷出身のストア派哲学者エピクテトスの教えを弟子がまとめたもの。「自分でコントロールできることだけに専念せよ」といったストア派の人生訓が平易に述べられており、禁欲と精神の自由を説く実践的哲学の名著です。

7. マルクス・アウレリウス『自省録』 (Meditations)

ローマ皇帝マルクス・アウレリウスによる内省の記録。ストア哲学にもとづいて書かれた個人的な箴言集で、「人間として善く生きる」ための自己鍛錬と思索が綴られています。静かな励ましに満ちた人生哲学の古典です。

8. セネカ『人生の短さについて』 (De Brevitate Vitae)

古代ローマの政治家でストア派哲学者でもあったセネカの随想。限りある人生をいかに有意義に使うかを説き、「人生は十分に長いが我々が無駄にしているだけだ」といった洞察で知られます。ストア派の人生観を平易に味わえる小品です。

9. アウグスティヌス『告白』 (Confessions)

キリスト教哲学の父ともいわれるアウグスティヌスが、自らの魂の遍歴を綴った自伝的著作。放蕩の青年期から回心に至る内省と神への告白が文学的に描かれ、「我が心は神に憩うまで安らぎを知らない」という有名な一節に象徴されるように、人間の根源的な不安と真理への渇望が語られます。

10. ボエティウス『哲学の慰め』 (The Consolation of Philosophy)

古代末期の哲学者ボエティウスが獄中で著した対話篇。擬人化された「哲学」の女神が登場し、不遇に嘆く著者に語りかけて運命や幸福の意味を説きます。古代と中世を架橋するラテン哲学文学の名作であり、不運に際しての精神的支えとなる古典です。

11. モーセス・マイモニデス『マイモニデス伝』

中世ユダヤ哲学を代表するマイモニデスが1190年頃、アラビア語で著した哲学書​。旧約聖書の難解な箇所をアリストテレス哲学の用語で解釈し、理性と信仰の調和を図りました。中世イスラム圏・ユダヤ思想の集大成で、後の哲学者にも影響を与えた作品です。

12. トマス・アクィナス『神学大全』 (Summa Theologica)

中世スコラ哲学の頂点をなすアクィナスの大著。キリスト教神学をアリストテレス哲学の体系で統合し、宇宙の秩序や倫理原理を論じました。その一部は「自然法」や「正戦論」などとして現代にも通じ、膨大ながら中世思想を理解する上で欠かせない代表作です。

13. ニッコロ・マキアヴェッリ『君主論』 (Il Principe)

ルネサンス期イタリアの思想家マキアヴェッリによる政治哲学書。国家統治における現実主義を説き、「目的のためには手段を選ばない」君主像を描写しました。権謀術数のイメージで語られますが、近代政治思想の先駆として国家と権力を分析した古典です。

14. トマス・モア『ユートピア』 (Utopia)

16世紀イギリスの思想家モアが著した空想社会の物語。架空の理想島「ユートピア」の社会制度を対話形式で描き、当時の現実社会を風刺しています。私有財産のない平等社会や勤労の尊重など、後世の社会思想に影響を与えたユートピア文学の原点です。

15. ミシェル・ド・モンテーニュ『エセー(随想録)』 (Essays)

16世紀フランスのモンテーニュによる随想集。「私は何を知るか?」という懐疑の精神で、人間のあらゆる経験を自己洞察し、「人生の知恵」を平易な随想として綴りました。パスカルやデカルトにも影響を与えた近代的自我の表白として、哲学エッセイの古典です。

16. ルネ・デカルト『方法序説』 (Discours de la méthode)

17世紀フランスの哲学者デカルトが、自身の哲学的方法を平易に説いた入門書。「我思う、ゆえに我あり」の精神に象徴される合理主義の出発点であり、近代哲学の幕開けを告げる一冊です。難解な専門書より読みやすく、科学と哲学の方法論の原点を学べます。

17. ルネ・デカルト『省察』 (Meditations on First Philosophy)

デカルトによるもう一つの主著で、こちらはより専門的に認識論・存在論を論じたものです。夢や悪魔の仮説によって徹底的懐疑を行い、それでも疑い得ない真理として「コギト・エルゴ・スム(我思う、ゆえに我あり)」に到達する過程を描きます。理性による真理探究の手本となる近代哲学の傑作です。

18. トマス・ホッブズ『リヴァイアサン』 (Leviathan)

17世紀イギリスのホッブズが、国家主権の正当性を初めて包括的に論じた政治哲学書。自然状態を「万人の万人に対する闘争」とし、平和のために社会契約で絶対主権者(リヴァイアサン)に権利を委譲すべきと説きました。近代社会契約論の原型として重要です。

19. バールーフ・スピノザ『エチカ』 (Ethics)

17世紀オランダの哲学者スピノザが幾何学的手法で記述した哲学体系書。神即自然という汎神論的な立場から、感情の解析や人間の自由を論じます。定義・公理から命題を導くスタイルは難解ですが、合理主義と一種の宗教的敬虔さが融合した独自の哲学として西洋思想史に光彩を放つ名著です。

20. ジョン・ロック『人間知性論』 (An Essay Concerning Human Understanding)

17世紀イギリス経験論の祖ロックによる認識論の古典。人間の心は白紙(タブラ・ラサ)で、生得観念は存在しないと主張し、あらゆる知識は経験に由来すると論じました。観念と知識の起源を探究したこの著作は、ヒュームなど後続の経験論哲学に大きな影響を与えました。

21. ジョージ・バークリー『人知原理論』 (Treatise Concerning the Principles of Human Knowledge)

18世紀アイルランドの哲学者バークリーが著した認識論書。物質は知覚されることによってのみ存在するとする「存在するとは知覚されること(存在=知覚されるもの)」という徹底した観念論(主観的唯心論)を展開しました。ロック経験論への批判から生まれた独創的な哲学です。

22. デイヴィド・ヒューム『人間知性研究』 (An Enquiry Concerning Human Understanding)

18世紀スコットランドの哲学者ヒュームによる経験論の集大成的著作。因果関係の認識や帰納法への懐疑(「明日も太陽が昇る保証は論理的にはない」)を示し、知識の限界を分析しました。カントに「ヒュームの懐疑で目覚めさせられた」と言わしめた、近代認識論の重要書です。

23. シャルル・ド・モンテスキュー『法の精神』 (De l’esprit des lois)

18世紀フランスの啓蒙思想家モンテスキューによる政治・法思想書。各国の法制度と社会を比較し、三権分立の原則を提唱しました。特に立法・行政・司法の権力分立論は近代憲法の基本となり、権力の抑制と均衡の思想として現代まで受け継がれています。

24. ジャン=ジャック・ルソー『社会契約論』 (Du contrat social)

18世紀フランスの思想家ルソーが人民主権を論じた政治哲学の古典。「人間は自由なものとして生まれたが、至る所で鎖につながれている」という書き出しで有名です。一般意志に基づく人民主権と直接民主制の理念を説き、フランス革命にも影響を与えた、市民社会思想の原点です。

25. ジャン=ジャック・ルソー『エミール』 (Émile)

同じくルソーによる教育哲学の名著。孤児エミールの養育物語を通じて、自然に即した人間教育の理想を描きました。子どもの自主性や発達段階に応じた教育論は近代教育思想の源流であり、「人間は弱い時には自然の手に委ねられ、強くなると教育の手に委ねられる」というように、人間形成について深い洞察を与えます。

26. ヴォルテール『カンディード』 (Candide)

18世紀フランスの啓蒙思想家ヴォルテールによる哲学風刺小説。楽天主義を風刺した物語で、戦争や災害を経験した主人公が「この世は最善の世界」という師の教えに疑問を抱いていく様子が描かれます。軽妙な筆致で当時の権威や楽観論を批判した作品で、啓蒙の精神を生き生きと伝えます。

27. ジェレミー・ベンサム『道徳および立法の諸原理序説』 (An Introduction to the Principles of Morals and Legislation)

18~19世紀イギリスの哲学者ベンサムが功利主義を体系化した著作。「最大多数の最大幸福」の原理のもと、快楽と苦痛の計算による立法論を展開しました。近代倫理学・法哲学に大きな足跡を残し、後のJ.S.ミルらに受け継がれた功利主義哲学の古典です。

28. イマヌエル・カント『純粋理性批判』 (Kritik der reinen Vernunft)

18世紀ドイツの哲学者カントが著した近代哲学最大級の難著。人間の認識能力を根本から批判的に検討し、我々の認識が時間・空間やカテゴリーという枠組みに制約されていることを明らかにしました。経験論と合理論を統合し、「認識が対象に従うのではなく、対象が認識の仕方に従う」という認識論革命をもたらした、哲学史上画期的な作品です。

29. イマヌエル・カント『道徳形而上学の基礎づけ』 (Grundlegung zur Metaphysik der Sitten)

カントが倫理学の基礎原理を論じた著作。「それ自体が目的として扱われるべき人間の尊厳」や「汝の行為の格率が普遍的法則となるよう行為せよ」という定言命法の倫理法則を提示し、動機主義にもとづく近代道徳哲学を確立しました。薄い書物ながら道徳哲学の原典として非常に影響力があります。

30. G.W.F.ヘーゲル『精神現象学』 (Phänomenologie des Geistes)

19世紀ドイツの哲学者ヘーゲルによる大著で、人間精神が意識→自己意識→理性→絶対精神へと発展する過程を描いたものです。著名な「主人と奴隷の弁証法」など弁証法的発展の図式で知られます。難解ですが、歴史や精神を動的に捉えるその体系はマルクスや現代哲学に多大な影響を与えました。

31. アルトゥル・ショーペンハウアー『意志と表象としての世界』 (Die Welt als Wille und Vorstellung)

19世紀ドイツの厭世哲学者ショーペンハウアーの主著。世界は人間の表象にすぎず、その根底には盲目的な「生の意志」があると論じました。生存への意志ゆえに人間は苦しむとし、東洋思想の影響もあって解脱を理想とする悲観主義的世界観を展開しています。ニーチェにも影響を与えた独特の形而上学です。

32. セーレン・キルケゴール『死に至る病』 (Sygdommen til Døden)

19世紀デンマークの哲学者キルケゴールが著した実存哲学の書。タイトルは「絶望」のことであり、人間が自己と向き合い主体的に生きることの困難を分析しています。絶望を「自己であろうとしない自己」と定義し、主体的なあり方を模索する内容は、後の実存主義(サルトルなど)の先駆けとなりました。

33. カール・マルクス『資本論』 (Das Kapital)

19世紀ドイツの経済学者マルクスによる経済学・社会哲学の大作。資本主義経済の構造を分析し、労働価値説や剰余価値の搾取、資本主義の矛盾と崩壊を論じました。労働者階級の視点から歴史を動力学的に捉えた本書は、社会主義運動に理論的基盤を与え、政治哲学・経済思想に極めて大きな影響を及ぼしました。

34. メアリ・ウルストンクラフト『女性の権利の擁護』 (A Vindication of the Rights of Woman)

18世紀末イギリスの思想家ウルストンクラフトによる初期フェミニズムの古典。女性にも理性と教育の機会を与えるべきと論じ、当時の男性中心社会に異議を唱えました。女性解放思想の先駆けであり、後の女性参政権運動などにも影響を与えた、ジェンダー平等思想の原点です。

35. ヘンリー・D・ソロー『森の生活』 (Walden; or, Life in the Woods)

19世紀米国の思想家ソローが、自給自足の森での生活を記録した随筆。産業社会から離れ簡素な暮らしを送る中で得た自然観察や人生洞察が、美しい文章で綴られています。物質主義を戒め精神の充足を追求する哲学的な内容で、環境思想やシンプルライフのバイブル的名著です。

36. ラルフ・W・エマーソン『エマーソン エッセイ集』 (Essays)

19世紀米国の思想家エマーソンによる随筆集。代表作「自己信頼」では、他者に迎合せず自らの良心に従って生きる個人主義の精神を説きました。自然や超越神秘主義に関するエッセイも含まれ、アメリカン・ルネサンス期の思想(超絶主義)の中心的人物として、独立独歩の哲学を平易な言葉で表現しています。

37. アレクシ・ド・トクヴィル『アメリカのデモクラシー』 (De la démocratie en Amérique)

19世紀フランスの政治思想家トクヴィルによる、アメリカ社会の実地考察にもとづいた名著。民主主義社会における平等と自由の関係、また多数派の専制などの概念を分析しました。現代の民主主義を理解する上でも示唆に富み、政治社会学の古典として読まれています。

38. ジョン・ステュアート・ミル『自由論』 (On Liberty)

19世紀イギリスの哲学者J.S.ミルが、個人の自由と社会の関係を論じた名著。社会が個人に干渉できるのは「他者に危害を与える場合に限る」という「他害原則」を提唱し、表現の自由や思考の自由の擁護を訴えました。リベラリズム(自由主義)の古典として、現代の人権思想にも直結する作品です。

39. フリードリヒ・ニーチェ『ツァラトゥストラはこう言った』 (Also sprach Zarathustra)

19世紀ドイツの哲学者ニーチェが叙事詩的スタイルで著した哲学的物語。預言者ツァラトゥストラの語りを通じ、「神は死んだ」「超人」など挑発的な思想を詩的に表現しました。ニヒリズムを乗り越える思想として、その情熱的な文体とメッセージは哲学のみならず文学としても人々を魅了しています。

近現代の西洋哲学(20~21世紀)

40. ウィリアム・ジェームズ『プラグマティズム』 (Pragmatism)

1907年、米国の哲学者ウィリアム・ジェームズが発表した講義録。「有用であること」が真理の基準であるとする実用主義哲学を平易に説いた著作です。科学的精神と宗教的ニーズの調停を図り、アイデアの意味はその効果で決まると主張しました。アメリカ思想特有の実践的な哲学観を理解できる一冊です。

41. ジョン・デューイ『民主主義と教育』 (Democracy and Education)

1916年に米国の教育哲学者デューイが著した教育哲学の古典。民主社会における公教育の意義を論じ、経験に根ざした学習と「学校は社会の縮図」といった理念を提唱しました​。子どもの主体性を重んじる進歩主義教育の理論書であり、現在の教育思想にも大きな影響を与えています。

42. マックス・ヴェーバー『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』 (Die protestantische Ethik und der Geist des Kapitalismus)

1905年、ドイツの社会学者マックス・ヴェーバーによる社会思想の名著。プロテスタントの禁欲的倫理が近代資本主義の精神形成に役立ったと分析しました。宗教と経済の関係を論じた文化社会学の古典であり、現代でも宗教社会学や経営倫理の文脈で参照されます。

43. T.W.アドルノ & M.ホルクハイマー『啓蒙の弁証法』 (Dialektik der Aufklärung)

1940年代ドイツのフランクフルト学派哲学者、アドルノとホルクハイマーの共著。啓蒙思想が合理性を極端化した果てに野蛮(全体主義や大量消費社会)を生んだと批判し、「道具的理性」の問題を指摘しました。近代への深い省察を含む文化批判の書で、現代社会やメディア論にも影響を及ぼしています。

44. ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタイン『論理哲学論考』 (Tractatus Logico-Philosophicus)

1921年、オーストリア出身の哲学者ウィトゲンシュタインが著した近代哲学の革新的作品。「語り得ぬものには沈黙せねばならない」という有名な結論に至るまで、世界と言語の対応関係を数々の命題で示しました。論理実証主義にも影響を与え、20世紀の言語哲学の出発点となった難解ながら重要なテキストです。

45. マルティン・ハイデガー『存在と時間』 (Sein und Zeit)

1927年刊行、ドイツの哲学者ハイデガーによる20世紀最大級の哲学書。人間を「現存在(ダーザイン)」として分析し、世界への投企・頽落・良心の呼び声・死への存在など、存在の意味を問いました。現象学を基礎に独自の実存論を展開し、サルトルら実存主義や現代哲学に絶大な影響を与えた難著です。

46. ジャン=ポール・サルトル『存在と無』 (L’Être et le néant)

1943年、フランス実存主義を代表するサルトルの主著。人間存在を「即自存在」と「対自存在」に分けて分析し、自由であるがゆえの「嘔吐」や「自己欺瞞」など、人間の根源的な自由と責任の重さを論じました。難解ですが20世紀実存哲学の白眉であり、戦後思想や文学に大きな影響を与えました。

47. アルベール・カミュ『シーシュポスの神話』 (Le Mythe de Sisyphe)

1942年、フランスの作家カミュによる哲学的エッセイ。無意味に繰り返される労苦に象徴される神話上の人物シーシュポスになぞらえ、人間の不条理な状況を論じました。「それでもなおシーシュポスは岩を押し続けるのだ」と結び、人間は不条理を直視しつつも反抗し生き抜くべきだと説いています。不条理哲学の代表的作品です。

48. シモーヌ・ド・ボーヴォワール『第二の性』 (Le Deuxième Sexe)

1949年、フランスの哲学者ボーヴォワールが著したフェミニズム哲学の古典。女性は生まれながらに「女」なのではなく社会によって「第二の性」とされると論じ、歴史・神話・日常の中で作られる女性像を暴きました。「人は女に生まれない、女になるのだ」という有名な言葉で女性解放を訴え、現代フェミニズム思想の原点となった書です。

49. ハンナ・アーレント『人間の条件』 (The Human Condition)

1958年、ドイツ出身の政治哲学者アーレントの主著。人間の活動を「労働・仕事・活動(アクション)」の三つに区分し、特に活動(公共的な言語行為)の意義を論じました。近代における公共性の喪失を憂い、人間らしさの条件を問うた本書は、全体主義の分析で著名な彼女の思想のもう一つの柱であり、現代の政治哲学・公共哲学に影響を与えています。

50. ユルゲン・ハーバーマス『公共圏の構造転換』 (Strukturwandel der Öffentlichkeit)

1962年、ドイツの哲学者ハーバーマスが市民社会の歴史を分析した著作。18世紀に台頭した「ブルジョア公共圏」がマスメディアの発達などで変容していく過程を描き、公共性と世論の理論を打ち立てました。コミュニケーション行為論へと至るハーバーマス思想の出発点であり、メディア論や民主主義論にも大きな影響を持つ作品です。

51. カール・ポパー『開かれた社会とその敵』 (The Open Society and Its Enemies)

オーストリア出身の科学哲学者ポパーが1945年に著した社会哲学書。プラトンやヘーゲル、マルクスの歴史主義思想を批判し、批判的合理主義に基づく「開かれた社会」の理念を擁護しました。全体主義に対抗する自由で民主的な社会の価値を説いた書として、第二次大戦後の政治思想に大きな影響を与えています。

52. トーマス・クーン『科学革命の構造』 (The Structure of Scientific Revolutions)

1962年、アメリカの科学史家クーンによる科学哲学の名著。科学の発展は直線的な蓄積ではなく、「パラダイム」の交代による革命的変化で起こると提唱しました。「パラダイムシフト」という概念は広く一般にも浸透し、科学のみならず社会や思考の転換を説明するキーワードとなっています。

53. ジョン・ロールズ『正義論』 (A Theory of Justice)

1971年、アメリカの哲学者ロールズが発表した政治哲学の古典。人々が無知のヴェールの下で社会契約を結ぶと仮定し、社会的・経済的な不平等は最も不遇な人々の利益になる場合にのみ許容されるとする「格差原理」を含む正義の二原理を導出しました。現代のリベラリズム政治哲学を代表する金字塔です。

54. ミシェル・フーコー『監視の誕生』 (Surveiller et punir)

1975年、フランスの哲学者フーコーによる社会思想の著作。近代刑罰の変遷を分析し、パノプティコン(全監視施設)の概念を用いて近代社会における規律権力を論じました。狂気や性と並ぶフーコーの主要テーマの一つで、権力がどのように人々を「監視」し「処罰」するかを歴史的に解明した影響力大きい作品です。

55. ジャック・デリダ『グラマトロジーについて』 (De la grammatologie)

1967年、フランスの哲学者デリダが著したポスト構造主義の難著。「エクリチュール(文字)」の優位性を唱え、西洋哲学のロゴス中心主義(言葉=ロゴス偏重)を批判しました。脱構築という思考法で有名であり、本書はその理論的出発点として文学批評や哲学に新視座を提供した前衛的作品です。

56. フランツ・ファノン『地に呪われた者』 (Les Damnés de la Terre)

1961年、フランス領出身の精神科医ファノンが著した植民地革命論の書。アルジェリア独立戦争の経験から、植民地主義がもたらす心理的圧迫を分析し、被抑圧者による暴力的革命を肯定的に捉えました。ポストコロニアル理論の原点として第三世界解放運動に影響を与えた、過激ながら重要な政治哲学テキストです。

57. エーリヒ・フロム『愛するということ』 (The Art of Loving)

1956年、ドイツ出身の社会心理学者フロムによる愛に関する名著。愛を技術(アート)であり積極的に学ぶべきものと捉え、成熟した愛のあり方を心理学・哲学的に論じました。家族愛や神への愛など様々な愛を分析し、現代人が陥りがちな愛の誤解を解きほぐしています。自己啓発的な平易さで書かれ、今なお広く読まれる古典的ベストセラーです。

58. クロード・レヴィ=ストロース『悲しき熱帯』 (Tristes Tropiques)

1955年、フランスの文化人類学者レヴィ=ストロースが記した紀行・民族誌的エッセイ。ブラジルの未開社会でのフィールドワーク体験をもとに、西欧文明への批評と異文化への深い省察を綴りました。構造主義人類学の大家による文学的名文で、人類の多様な文化に対する洞察に富み、哲学的な問いをも喚起する作品です。

59. ホセ・オルテガ・イ・ガセット『大衆の反逆』 (La rebelión de las masas)

1930年、スペインの哲学者オルテガによる社会批評の著作。20世紀に勃興した「大衆社会」で、画一化した大衆が政治文化を支配する傾向を憂え、エリートと大衆の関係を論じました。大衆社会の問題点を早くに指摘した先駆的分析であり、現代のポピュリズム現象を考える上でも示唆に富む古典です。

60. ジークムント・フロイト『文明への不満』 (Das Unbehagen in der Kultur, 英題: Civilization and Its Discontents)

1930年、オーストリアの精神分析学者フロイトが文明批判を展開した後期の著作。人間の本能的欲望(エロス)と社会規範との葛藤から、「文明」は個人に欲求不満(不幸)を強いると論じました。宗教や道徳への大胆な批評も含み、心理学のみならず文化哲学としても影響力を持つ作品です。

61. アンリ・ベルクソン『創造的進化』 (L’Évolution créatrice)

1907年、フランスの哲学者ベルクソンが生命の躍動を哲学的に捉え直した名著。ダーウィン進化論では説明しきれない生命の創発的な力を「エラン・ヴィタール(生命の飛躍)」という概念で提示し、時間を空間のように捉える科学的思考を批判して質的な「純粋持続」の重要性を説きました。直観主義哲学の代表作であり、当時の思想界にも衝撃を与えた作品です。

62. ロバート・M・パーシグ『禅とオートバイ修理技術』 (Zen and the Art of Motorcycle Maintenance)

1974年、アメリカの作家パーシグが発表した哲学的自伝小説。父子でのオートバイ旅行記の形を借りつつ、「質」とは何かという形而上学的テーマを追究します。東洋の禅思想と西洋の合理精神を融合しながら人生哲学を語るユニークな内容で、一般読者にも哲学への興味を喚起した異色のベストセラーです。

63. ピーター・シンガー『新・動物の解放』 (Animal Liberation)

1975年、オーストラリア出身の倫理学者シンガーによる応用倫理の古典。工場式畜産や動物実験の現状を暴露し、種差別(スペシーシズム)の不当性を訴えました。動物にも苦痛を感じる権利があると主張し、動物権利運動の火付け役となった名著です。動物福祉やヴィーガニズムに関心を持つ人にとって必読の倫理書と言えます。

東洋哲学の名著(古代~近代)

64. 孔子『論語』 (Lún Yǔ)

紀元前5世紀頃の中国の思想家孔子とその弟子たちの言行録。仁・礼・孝など人倫の徳を中心に据え、「己の欲せざる所は人に施すなかれ」といった格言に代表される教えが収められています。東洋倫理思想の原典であり、東アジアの教養の基盤となった書物です。

65. 老子(老聃)『老子(道徳経)』 (Dào Dé Jīng)

紀元前6~4世紀頃、中国の老子によるとされる短編箴言集。全81章から成り、「」と呼ばれる万物の根源原理と、人為を排した無為自然の生き方を説きます。「大いなる道は水のごとし」など象徴的な表現で知られ、東洋における形而上学・政治哲学の源泉となった神秘的な名著です。

66. 荘子(荘周)『荘子』 (Zhuāng Zǐ)

紀元前4~3世紀頃、中国の荘周(荘子)による思想物語集。胡蝶の夢の故事に代表されるように、相対化された世界観や自由奔放な発想で知られます。老子の道家思想を受け継ぎつつも寓話的・文学的な文章で、人為の束縛を超えた絶対自由の境地を描きました。想像力豊かな中国哲学の古典です。

67. 墨子『墨子』 (Mò Zǐ)

紀元前5~4世紀頃の中国の思想家墨子とその門徒の言行を収めた書。儒家を批判し、兼愛(すべての人への平等な愛)や非攻(侵略戦争の否定)を主張した平和主義・功利主義的思想が特徴です。科学技術にも優れ、攻城戦術にも通じていた墨子の、多面的な思想がまとめられたユニークな古典です。

68. 孟子『孟子』 (Mèng Zǐ)

紀元前4世紀、中国戦国時代の儒家・孟子の言行録。「人間の本性は善である」という性善説を唱え、王道政治(徳による統治)を理想としました。孔子の儒学を発展させ、四端の心(惻隠・羞悪・恭敬・是非)など人間の善性に基づく倫理を説いた内容は、後世の儒教道徳に大きな影響を与えています。

69. 荀子『荀子』 (Xún Zǐ)

紀元前3世紀、中国戦国時代の儒家・荀子の思想書。孟子とは逆に性悪説を唱え、人間の本性の悪を教育や礼法によって矯正すべきと主張しました。礼による秩序維持や法治の必要性を論じ、のちの法家思想にも影響を与えた現実主義的儒学の古典です。「人の性は悪にしてその善なる者は偽なり」と明言する荀子の思想は、儒教内の異色ながら重要な立場です。

70. 韓非『韓非子』 (Hán Fēi Zǐ)

紀元前3世紀、中国秦代の法家思想家・韓非による言説をまとめた書。性悪説に立ち、法律と刑罰による統治(法治主義)を徹底すべきと説きました。君主が権力を維持する術を具体的に論じ、「信賞必罰」の原則や権術の必要を強調した内容は冷徹ですが、秦の始皇帝が採用し中国統一に寄与しました。中国政治思想における現実主義の極致と言える作品です。

71. 『易経』 (Yì Jīng)

古代中国の占いの書であり哲学書。陰陽二爻の組み合わせによる64卦を立て、変化する事象の原理を示しています。時代を通じて儒家・道家双方に尊重され、宇宙観や人間社会の吉凶判断に影響を与えました。難解ですが「無為自然」「剛柔並衡」など東洋哲学的な思考の源流として重要な古典です。

72. 『ウパニシャッド』 (Upanishads)

紀元前8~前5世紀頃から編まれた古代インドの哲学的文献群。ヴェーダ聖典の終章にあたり、梵我一如(ブラフマンとアートマンの同一)という核心思想を説きます。宇宙の根本原理ブラフマンと自己の本質アートマンは実は一つであると悟ることで輪廻から解脱できるとし、ヒンドゥー教のみならず後のインド思想全般に決定的な影響を与えた神秘哲学の書です。

73. 『バガヴァッド・ギーター』 (Bhagavad Gītā)

古代インド叙事詩「マハーバーラタ」の一篇である哲学詩篇。戦場に立つアルジュナ王子に神クリシュナが説法する形で、義務(ダルマ)の遂行や自己の献身について論じられます。カルマ・ヨーガ(行為の道)、バクティ・ヨーガ(信愛の道)、ジニャーナ・ヨーガ(知恵の道)など様々な救済の道を調和させたインド哲学のエッセンスであり、ヒンドゥー教の精神的支柱となっています。

74. 『ダンマパダ(法句経)』 (Dhammapada)

古代インドの仏教経典で、ブッダの説いた詩偈を集めたもの。「人は法(ダンマ)によって導かれる」など、人生の指針となる偈頌が423偈にまとめられています。「すべての現象は心に先立つ」という冒頭句に始まる本書は、仏教倫理のエッセンスであり、仏陀の平明な智慧と言葉を通じて東洋倫理の原点に触れることができます。

75. 『ヨーガ・スートラ』 (Yoga Sutras of Patanjali)

西暦前後頃のインドの聖者パタンジャリによるヨーガ哲学の経典。全195の短い箴言で構成され、心の作用の止滅(ヨーガ)を究極目標とするラージャ・ヨーガ(瞑想修行)の理論と実践法を示しています。八支則(八段階の修行)として知られるヤマ・ニヤマ(禁戒・勧戒)や坐法、瞑想等が体系化されており、インド哲学の実践的側面と深遠な心理学的洞察を学べる古典です。

76. イブン・ハルドゥーン『歴史序説』 (Al-Muqaddimah)

14世紀の北アフリカ出身イスラーム知識人、イブン・ハルドゥーンによる歴史哲学書​。遊牧民と定住民の興亡を分析し、アサビーヤ(集団連帯意識)という概念で王朝交替の法則性を論じました。近代以前に社会現象を科学的・体系的に考察した先駆的作品であり、社会学の萌芽とも評価されます。

77. 道元『正法眼蔵』 (Shōbōgenzō)

13世紀、日本の禅僧・道元による仏教哲学書。全95巻にわたり、坐禅と仏法の真髄を平易な和漢混淆文で説き明かしています。「現成公案」「時間の研究(有時)」などの巻で示されるように、禅の深遠な悟りの境地や時間論・存在論が論じられており、日本のみならず世界的にも高い評価を受ける仏教哲学の名著です。

78. 吉田兼好『徒然草』 (Essays in Idleness)

14世紀、日本の随筆家である兼好法師による随筆集。仏教的無常観にもとづき、「徒然なるままに」綴られた約240段のエッセイは、日常の些事から人生の深奥まで広範な話題を扱います。「もののあはれ」や侘び寂びに通じる美意識を伝え、日本中世の思想・文化を知る上で欠かせない随想文学の古典です。

79. 宮本武蔵『五輪書』 (The Book of Five Rings)

17世紀、剣豪宮本武蔵が晩年に記した兵法書。地・水・火・風・空の五巻から成り、剣術の極意だけでなく心構えや戦略論を哲学的に説いています。「心を乱さず、状況をよく観よ」といった教えは武術の枠を超え、経営戦略にも応用されるなど広く読み継がれています。日本的な実践知を示す名著です。

80. 西田幾多郎『善の研究』 (An Inquiry into the Good)

1911年、近代日本を代表する哲学者・西田幾多郎の主著。主観と客観が合一する純粋経験の立場から、真・善・美の根源を探究しました。東洋の禅思想と西洋哲学を統合し、日本初の独創的哲学体系(京都学派)の出発点となった書物です。難解ながらも「純粋経験」や「絶対無」といった概念は日本思想史に画期をもたらしました。

81. 和辻哲郎『風土』 (Climate and Culture)

1935年、日本の倫理学者・和辻哲郎による文化哲学書。モンスーン型・砂漠型・牧場型という気候区分を提示し、それぞれの自然環境が生み出す文化・倫理の特徴を論じました。日本を含む各地域の精神文化が風土(気候・地形)と深く関わることを説いた内容は、地理哲学の名作として知られます。

82. 九鬼周造『「いき」の構造』 (The Structure of Iki)

1930年、日本の哲学者九鬼周造が江戸時代の粋(いき)という美意識を分析した作品。フランス哲学の方法論を借りつつ、「粋」を一種のエスプリ(媚態、意気地、諦めの三要素)として定義しました。日本人の美学的態度を哲学的に考察したユニークな研究で、和辻と並び日本独自の思想を追求した名著です。

83. 新渡戸稲造『武士道』 (Bushido: The Soul of Japan)

1900年、日本の教育者新渡戸稲造が英語で発表した、日本の武士道精神の解説書。忠誠、名誉、礼節、克己といった武士の徳目を紹介し、西洋の騎士道になぞらえつつ日本文化を世界に伝えました。明治期日本人の倫理観を知る手がかりとなる作品で、海外で広く読まれ日本文化理解に貢献した名著です。

84. M.K.ガーンディー『真の独立への道』

1909年、インド独立の父ガンジーがグジャラーティー語で執筆した小冊子。西洋近代文明の暴走を批判し、インドは機械文明ではなく伝統的価値観によって「自己統治(スワラージ)」を達成すべきと説きました。非暴力・不服従による自主独立の哲学が簡潔に示されており、ガンジー思想を理解する最良のテキストです。

85. ハリール・ジブラーン『預言者』 (The Prophet)

1923年、レバノン生まれの作家ジブラーンが英語で発表した詩的散文集。架空の預言者が旅立ちに際して人々の問いに答える形式で、愛、仕事、友情、宗教など人生の諸側面について深い洞察を語ります。聖書やスーフィーの影響を感じさせる神秘的な文体で、東西の英知を融合した精神性豊かな作品として世界中で愛読されています。

哲学入門書(初心者向け)

86. ヨースタイン・ゴルデル『ソフィーの世界』 (Sofies verden, 英題: Sophie's World)

1991年、ノルウェーの作家ゴルデルが著した哲学入門小説。14歳の少女ソフィーが謎の哲学講座を受け取り、古代から現代までの哲学史を体験していく物語です。「世界で一番やさしい哲学の本」とも評され、ストーリーを追いながら哲学の主要な考え方を楽しく学べる名作です。

87. ウィル・デュラント『歴史の対局を見渡す』

1926年、アメリカの歴史家デュラントによる哲学入門書​。古代ギリシアから19世紀までの西洋の重要な哲学者たち(プラトン、カント、ニーチェ他)の生涯と思想を平易に紹介しています。哲学史に沿って偉人たちのエピソードを交えつつ解説するため読みやすく、哲学へのとっかかりとしてロングセラーとなった一冊です。

88. バートランド・ラッセル『西洋哲学史』 (A History of Western Philosophy)

1945年、イギリスの哲学者ラッセルが執筆した大著。古代ギリシアから近代までの哲学者を、社会的背景と絡めて批評的に論じています。ラッセル特有の明晰かつ皮肉交じりの筆致で、哲学の流れを俯瞰できる一冊です。哲学初心者にも体系的理解をもたらす名解説書と言えます。

89. バートランド・ラッセル『哲学の諸問題』 (The Problems of Philosophy)

1912年、ラッセルによる哲学入門書。知覚と実在、物質の本性、帰納の問題、自由意志と決定論など、哲学の基本問題を平易に解説しています。20世紀初頭の視点から書かれていますが、明快な論理展開で現在でも哲学の入門テキストとして親しまれています(邦題「哲学入門」として紹介されることもあります)。

90. ブライアン・マギー『知の歴史』 (The Story of Philosophy)

1998年、イギリスの哲学解説者マギーによる哲学入門書。図版も豊富なビジュアル版解説書であり、古代から現代までの哲学者20名を取り上げわかりやすく解説しています​。専門家へのインタビュー形式も採用し、難解な思想も平易に噛み砕いて紹介。哲学初心者が全体像を把握するのに適した一冊です。

91. トマス・ネーゲル『哲学ってどんなこと?』 (What Does It All Mean?)

1987年、米国の哲学者ネーゲルが大学生向けに書いた、とても短い哲学入門書。知識、他人の心、自由意志、善悪、意味、死など哲学の基本的テーマをわずか100ページほどで平易に問いかけます。専門用語に頼らない語り口で、「哲学するとはどういうことか」を掴みやすい入門書です。

92. 馮友蘭(フォン・ヨウラン)『中国哲学史』 (A History of Chinese Philosophy)

1930年代、中国の哲学者馮友蘭が著した中国哲学の通史。先秦時代から清末まで、中国思想の発展を体系的に論じています。儒家・道家・仏教など多様な思想を網羅し、欧米の哲学史に匹敵する学問的水準で書かれた労作です。中国哲学を体系的に学びたい読者にとって信頼できる基本書となっています。

93. ナイジェル・ウォーバートン『入門哲学の名著』 (Philosophy: The Classics)

2001年、イギリスの哲学者ウォーバートンによる哲学名著ガイド。プラトン『国家』からロールズ『正義論』まで西洋哲学の重要な20作品を取り上げ、その概要と批判点をわかりやすく紹介しています。名著のエッセンスを掴むのに適した構成で、これから原典を読む人にも理解の助けとなる実用的な入門書です。

94. 三木清『哲学入門』 (Introduction to Philosophy)

1936年、日本の哲学者三木清による平易な哲学概論書。古今東西の哲学者を引用しつつ、「いかに生きるか」という根本問題から哲学の意義を説き起こします。専門用語に頼らず日常の言葉で書かれており、当時ベストセラーになるほど広く読まれました。戦前日本における一般向け哲学書の白眉で、今なお哲学への格好の入口となる一冊です。

その他の思想・評論

95. マーティン・ルーサー・キング・ジュニア「バーミングハム刑務所からの手紙」 (Letter from Birmingham Jail)

1963年、公民権運動指導者キング牧師が獄中で書いた公開書簡。非暴力的不服従による黒人解放運動の正当性を訴え、「不正な法律には従う道徳的義務はない」と主張しました。アメリカの人種差別に対する情熱的かつ論理的な抗議であり、人権と正義について深い哲学的問いかけを含む歴史的文書です。

96. パウロ・フレイレ『被抑圧者の教育学』 (Pedagogy of the Oppressed)

1970年、ブラジルの教育学者フレイレが著した革命的教育論。従来の銀行型教育(知識の詰め込み)を批判し、対話を通じて被抑圧者自身が主体的に世界を変革していく意識を育む教育を提唱しました。ラテンアメリカの解放神学やマルクス主義の影響を受けた実践的哲学書であり、発展途上国のみならず世界中の教育者に影響を与えた名著です。

97. エドワード・サイード『オリエンタリズム』 (Orientalism)

1978年、パレスチナ系米国人批評家サイードによるポストコロニアル研究の古典。西洋が中東・東洋を「オリエント」としてステレオタイプ的に表象し支配してきた構造を批判的に分析しました。学問や文学に潜む権力性を暴露し、以後の文化研究に革命をもたらした一冊です。東洋像を相対化し、異文化理解のあり方を問う現代必読の評論です。

98. アリストテレス『詩学』 (Poetics)

前330年頃、アリストテレスが執筆した最古の文芸批評書。悲劇を中心に韻文芸術の構成要素を分析し、カタルシス(感情浄化)の効果など演劇論・美学論を展開しました。長らくヨーロッパ演劇の規範となり、近代以降も文学理論の源泉であり続ける古典です。芸術哲学・美学の原点として、哲学のみならず文学・演劇関係者にも必読の書となっています。

99. クリスティーヌ・ド・ピザン『女たちの都』 (Le Livre de la Cité des Dames, 英題: The Book of the City of Ladies)

1405年、フランス中世の女性作家クリスティーヌ・ド・ピザンによる女性擁護の書​。女性蔑視が強かった中世ヨーロッパ社会で、神話や偉人伝を引きながら女性の徳と能力を称揚し、女性だけの理想都市を築く物語を展開しました。西洋最初期のフェミニスト思想とされ、近代以前の女性知識人による傑出した哲学的寓意書です。

100. モーリス・メルロ=ポンティ『知覚の現象学』 (Phénoménologie de la perception)

1945年、フランスの哲学者メルロ=ポンティによる現象学の名著。人間の身体性に注目し、身体を通して世界を知覚するという独自の哲学を展開しました。サルトルと並ぶフランス実存主義第二世代の代表として、心理学・認知科学にも影響を与えた作品です。体験の具体性から哲学するその手法は、現代における心身問題の議論にも通じています。

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